農場の風

オランダだより -第14便- 2009年11月18日

KUBO社のブース


補光用のLEDを展示している企業


Jenboch社製のCHP、横に立っている人と大きさを比べてみて下さい。







Horti Fair 2009

10月13日から10月16日まで、アムステルダムにて開催されたHorit Fairに行ってきました。Horti Fairには毎年行っていますので、今回は公式ホームページを十分確認せずに会場に行ったのですが、ブースマップをもらい驚きました。規模が大幅に縮小され、例年の半分程度になっていました。今年の4月にオランダに行ったときに、オランダの施設園芸業界は大変景気が悪いという話を聞いていましたが、こんなに規模が縮小されるとは思ってもいませんでした。主催者の発表によると、来場者は100ヶ国以上から34,043人(対前年比約70%)、出展企業は740社(対前年比約80%)だったそうです。 展示会の様子ですが、今年のテーマは、‘For a Sustainable Future’(持続可能な未来のために)でした。最優秀賞(Best Participant Award)は、オランダのハウスメーカーのKUBO社でした。受賞理由は、‘The Future of Greenhouses is Blue’(グリーンハウスの未来はBlueである)というブースのコンセプトとメッセージが、しっかりと来場者に伝わったからだそうです(写真1)。ここでひとつ英語の勉強ですが、このBlueにはどういう意味があるのか現地の方に聞いたところ、「未知の世界」と言う意味があり(例:ブルーオーシャン戦略)、それから派生して「持続可能なSustainable」と言う意味になるそうです。 ブースでは、KUBO社が米国のカリフォルニア州に建設したUltra-Climaというトマト栽培ハウスの説明がされていました。このハウスの特徴としては、太陽光発電システム、太陽熱の利用などがあげられます。 会場で、私の気づいた点は、LEDによる補光(写真2)、CHP(ガスエンジン)(写真3) 、新エネルギーの展示が多かったことです。LEDを光源としたハウス内への補光は、まだまだ現行のナトリウムランプと比較すると価格的に合わないそうですが、今後の更なる技術開発と特定の波長を利用した生育制御の研究が期待されると話をしていました。CHPのメーカーにとっては、いまや施設園芸は大きなマーケットのひとつになっているようで、多くのメーカーが展示をしていました。新エネルギーに関しては、バイオマスの利用方法やバイオマスエンジン、太陽熱を利用した温水器等が見られました。今年はテーマに即した、環境に配慮した持続可能な施設園芸の実現のための展示が多かったように思えました。

オランダの技術開発

近年、Horti Fairに毎年のように行かれている方は、会場を見学しても「特に目新しいものはない」とよく言われます。確かに画期的なアイデアや新製品が会場内で見られるかというと、ある程度オランダの施設園芸を見慣れた人には「目新しいものはない」というのが正解だと思います。しかし、トマトを例にあげれば、生産者においては毎年収量が向上しています。今回、あるトマト生産者を訪れたところ現在の収量は68kg/m2と言っていました。この方のところに3年ほど前に訪問したときは、60 kg/m2と言っていましたので3年間で13%の増収です。施設的には、ハウスは同じもので、変わったのは品種とCHPを導入したことぐらいだと思います。つまり、この生産者ではハード(システム)ではなくソフト(栽培技術)が向上しているということです。ですから、オランダの技術を習得する場合には、展示会ではハードを中心にしか見ることはできませんので、それらを活用するためのソフトをしっかりと把握することが重要だと思います。 Hemming(2009)によると、オランダでのトマト栽培では、1980年から2005年の間にエネルギー効率(投入エネルギー量に対する収量)が約2倍になりました。理由は、この間にエネルギー使用量は1990年ごろまでは増加しましたがその後減少したためほとんど変わっておらず、一方収量は年々増加し2倍になったためです。収量増加の要因としては、ハウスの光透過性、品種、栽培技術の向上が特に重要だそうです。つまり、トマトの生理と品種特性を理解して、その能力を栽培技術と栽培施設でどのように発揮させるかが収量向上に大きく関与してきたと言えます。画期的な機器の導入による「満塁ホームラン」的な手法ではなく、「ヒットとバント」のような細かな技術の積み重ねが現在の成果となっており、更に技術が向上できる要因や要素を持っているのがオランダ施設園芸の特徴だと思います。

世界経済とオランダの施設園芸

Horti Fairからもわかるように、オランダの施設園芸業界は大変厳しい状況です。その理由は、まず米国のサブプライム問題に端を発する世界的な金融危機が新設ハウスの減少に影響したためだそうです。例えばオランダでトマトハウスを新設する場合、10haのハウスを建設するとなると建物だけで10億円を超えます。建設用地(80ユーロ/m2とした場合)も準備すると、合計20億円の資金が必要となり、銀行からお金を借り入れることになります。しかし、金融危機により銀行がこの融資を渋るようになりハウスを新設する人が減ったそうです。一方では、資金が用意できハウスを建設した人は、ハウス用地の価格が下がり土地を安価に購入できたそうです。最近は、ハウスが大規模化してきたため、銀行が生産者に融資をしてハウスを建設させ、そのハウスを買い上げて再度生産者にリースをするケースも増えているそうです。そのため、「オランダで一番大きな生産者は銀行だ」と言っていた人もいました。このように、オランダには農業に積極的に融資をする銀行があり(例えばRabobank)、ハウスの資産価値も認められていることが、オランダの施設園芸が大きく発展してきた背景にあります。  青果物の価格低下も著しいそうです。オランダで生産されるトマトやパプリカは、約70~80%が輸出されており、施設園芸は輸出産業です。オランダの競合国のスペインやイスラエルでは、近年温暖な気候と安価な施設と労働力で生産量と輸出量が増加しています。そのため、欧州全土で青果物が過剰になっており、今年の価格はここ20年でもっとも悪かったとも言っていました。また、ハウスへのCHPの導入は売電をすることでかなりの利益をあげられるため急速に広がりました。オランダの農家は半農半電です。その結果、現在オランダに供給される電気の約10%はハウスから発電されるまでになっています。しかしこの救世主も、発電過剰のためか今年は売電価格が安くて困っているそうです。  このオランダの景気はいつまで続くかと聞くと、景気は山があれば谷もあるということで2、3年と言っていた方がいました。世界経済が農業の施設園芸に大きく影響しているオランダの現状は、日本以上に大変なことであろうと思いますが、これは施設園芸が「産業」として確立されているため、その様なことが起きているとも考えられます。

 引用文献 Hemming, S. 2009. Towards the semi-closed greenhouse. Energy in focus. Mini symposium/workshop. Intelligent use of energy in greenhouses, Odense, Denmark. 6-7 October. 36-38.

 

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