農場の風

トマトパークだより-第22便-2018年5月21日

写真1 大玉トマト圃場様子


写真2 大玉トマト果実の様子


写真3 ミニトマト圃場様子


写真4 ミニトマト果実の様子


写真5 カーテンによる遮光


図1. トマトパーク栽培室②(高糖度トマト)5月3日、4日の環境データ




大玉トマト -栽培室①-

【栽培ノート:2018年4月16日~2018年5月15日】

 品種:りんか409(株式会社 サカタのタネ)〈定植:8月17日〉

[生育状況(2018年5月15日現在)] (写真1,2)

 草丈:596.4cm、葉数:12枚、収量:34.57t/10a

 開花花房段数:25段目、収穫花房段数:20段目

[作業]

 誘引(クリップ、テープナー)、わき芽取り(成長点付近および株元)、

 摘花、果梗取り、下葉取り、吊り降ろし、収穫

[病害虫防除]

 コナジラミ防除、サビダニ防除、うどんこ病防除

ミニトマト -栽培室③-

【栽培ノート:2018年4月16日~2018年5月15日】

 品種:CF千果(タキイ種苗 株式会社)〈定植:8月17日〉

[生育状況(2018年5月15日現在)] (写真3,4)

 草丈:1107.9cm、葉数:16枚、収量:23.73t/10a

 開花花房段数:39段目、収穫花房段数:33段目

[作業]

 誘引(巻きつけ)、わき芽取り(成長点付近および株元)、摘花、果梗取り、

 下葉取り、吊り降ろし、収穫

[病害虫防除]

 コナジラミ防除、サビダニ防除、うどんこ病予防

『強光とうまく付き合うために』

  今年も5月に入って、一年で最も日射の強い時期になってきました。快晴日は全天日射量の日積算量が26MJ/m2を超え、トマト管理者としては曇雨天の冷えと晴天の高温の繰り返しに備えた管理が必要になります。トマトパークでも、尻腐れ果対策も兼ねて灌水管理と遮光カーテンの使用法を工夫しています。

  まずは灌水管理について考えてみましょう。トマトパークではロックウールを培地に使用しており、排液量計を用いて排液の出方を灌水量の一つの目安として使っています。例えば12月から1月の冬期は曇雨天時に排液がなくても、そうそう大きな問題になりません。気温が低いため蒸散量や果実の肥大量は少なく、急な晴天時でも日射が少ないので通常の灌水で、ある程度間に合うからです。しかし夏になって日射量が増えてくるとそうはいきません。曇雨天日に排液を出さない管理をしていると、冬期よりも培地内が乾燥してしまいます。その状態で、晴天日になると通常の灌水では間に合わない量の水をトマトが必要とし、さらに培地内の養液濃度が上がりすぎて根が吸水できなくなる可能性があります。

  トマトの吸水量は光の強さにある程度相関して上昇します。例えば、少々古い試験ではありますが、農研機構で1998年から2000年にかけてガラスハウス内で行われた試験では、吸水量(W: L/10a/日)は全天日射量(S: MJ/m2/日)、日平均飽差※1(D: kPa)、日平均気温(T: ℃)の3因子に対しW=-1710+82.8S+108T+2.17×103D※2という式が提案されました。この式から算出された吸水量と実際の吸水量との相関は極めて高い(r2=0.94)という結果が出ています。これは同じ温度、同じ飽差であっても1MJ/m2の積算日射の増加で82.8L/10a/日の吸水量の増加があることを示しています。少ないでしょうか?多いでしょうか?

  具体例を出して考えてみましょう。宇都宮気象台の観測データでは、2018年5月3日の全天日射量の日積算量は7.42MJ/m2でした。翌日の4日には22.63MJ/m2まで上昇しています。つまりハウス内平均気温や平均飽差が変わらない場合では、1,259L/10a/日の吸水量の差があるということになります。曇雨天では意図して高温管理にしない限り一般的にハウス内の気温は低くなり、飽差も下がりやすくなりますので、この差はもっと大きくなる可能性があります。日射が強くなる=吸水量は大幅に増加する、ということを感じてもらえたでしょうか。

  したがって、トマトパークでは晩春から日射量が増えてくる時期には曇雨天でも午前中に必ず排液が戻るように灌水の量を調整しています。マット内の含水率のリセットと養液濃度が濃くなりすぎることを防ぐためです。午前中に多量の灌水を行い、マットの含水率をリセットした後は、午後の灌水量を少なくし、含水率が維持されるかやや減っていくように管理します。水量の多い状態に根を晒し続けることも晴天時のしおれを助長することになるためです。根の状態を常に健康に保つことで吸水力を維持することが理想です。

  カーテンの使用法はどうでしょう。曇雨天から晴天への急激な変化でトマトの吸水が間に合わずしおれてしまうことがよくあります。そこで活躍するのがカーテンによる遮光です(写真1)。トマトパークでは、天候の変化で全体の株の1割ほどしおれが生じたら遮光をかけるようにしています。また、天候の急変が予測される日に管理者が不在になる場合は、通常ならば850W/m2でかかる遮光を750W/m2でかけるように予め設定しておきます。ここができるだけ強光に慣らしつつ、ダメージを抑えるために必要なラインだと判断しています。もちろん、しおれさせないためにはもっと早い段階で遮光することもできますが、それは人工的に曇天日を伸ばしているだけで、ずっと遮光が必要な状態にしてしまうことになります。また、ハウスの構造によって光透過率は大きく異なるため、トマトパークの設定値では遮光が強くかかってしまうこともあるでしょう。そのような長時間の遮光はトマトの光合成量を減らしてしまい、作物生産量の低下に直結します。実際の生産現場で細やかに管理を続けることは難しいことです。しかし、環境管理と植物生理を深く理解しておくことは、ハウス内環境の変化に対応できる幅を拡げてくれる武器になると考えます。

  ※1. ここでいう飽差はVapor Pressure Deficit(VPD)で、飽和水蒸気圧と現在の水蒸気圧との差。気圧の単位であるhPaまたはkPaで表される。
  ※2. この式は特定の品種を用いたガラスハウス内での栽培試験の一例なので、実際の栽培とは乖離している可能性があります。

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