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2022.05.19

リサーチパーク鶴だより-第6便-

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リサーチパーク鶴だより

第6便

夏のカーテン-

【カーテンによる高温期の暑さ対策について】

 リサーチパーク鶴では2019年11月からの1年間で、パプリカの夏越し栽培に取り組みました。この作型(2019年11月~2020年11月)は高温期の暑さ対策が大きな課題となります。暑さ対策としてはミストやカーテン、レディヒートなどの遮熱資材を外被に塗布する方法があります。その中でも今回はカーテンによる暑さ対策についてご紹介します。

 リサーチパーク鶴ではカーテンを2層設置しています。夏越し栽培に取り組むまでは上層にアルミが入ったテンパ6562D(以下テンパ)、下層にはラクソス1243D(以下ラクソス)を使用していましたが、夏越し栽培では、上層をテンパからフィルム間に隙間があるハーモニー4215O(以下ハーモニー)に変更しました(表1、図1)。その理由は遮光時のハウス内環境を改善するためです。以下で詳しく説明していきます。

表1 使用したカーテンの種類と直射光の遮光率
図1 ハーモニー、テンパ、ラクソスのサンプル図

【ハーモニーによる遮光時のハウス内環境の改善】

①遮光時の室温と光環境の改善

 図2はテンパ+ラクソスで遮光した温室とハーモニー+ラクソスで遮光した温室の室温の推移を示したグラフです。カーテン閉度は数値が高いほど閉まっていることを示しています。この測定結果から、ハーモニー+ラクソスで遮光した温室の方が昼平均気温を1.2℃低く維持できたことが分かりました。ただし、今回測定を行った2つの温室では栽培している作物が異なります。植物の蒸散量や栽植密度などの他の要因も考慮する必要があり、今回測定された室温の差はすべてカーテンによる効果であると一概には言えません。

図2 テンパ+ラクソスまたはハーモニー+ラクソスで遮光時の、
室温とカーテン閉度の推移(2020年8月30日)

 また、図3は図2のグラフと同日の温室ごとの光量子束密度(以下PPFD)の推移を示したグラフです。PPFDとは1秒間で1㎡あたりに当たる、光合成に使われる波長の光の量を示したものです。温室内のカーテン下にセンサーを設置し、植物に当たるPPFDを測定しました。それぞれの温室でのカーテンは、外の日射量が300~600 W/㎡と600 W/㎡以上の条件で図に示した設定で動作しています。この測定結果から、ハーモニー+ラクソスで遮光した方が遮光時のPPFDが約2 %多くなることが分かりました。上限はありますが、PPFDが多いほど光合成量は増加します。また、室温が高いほど植物の呼吸量が増加し、見かけの光合成量は減少します。そのため、PPFDが多く、室温が低く保たれていたということは植物の光合成量が増加する環境にあるということになり、収量の増加につながります。このように、ハーモニーには遮光時の室温と光環境を改善する効果があります。

図3 テンパ+ラクソスまたはハーモニー+ラクソスで遮光時の、
光量子束密度とカーテン閉度の推移(2020年8月30日)

②湿度環境の改善

 ハーモニーのフィルム間の隙間は、温室内から温室外へ抜ける通気性も改善します(図4)。そのため、遮光時に温室内が蒸れにくくなることが特徴です。図5はテンパ+ラクソスで遮光した温室と、ハーモニーで遮光した温室の遮光時の飽差の推移を示したグラフです。テンパ+ラクソスで遮光した温室では、カーテンが開いたタイミングで飽差が30分で5 g/㎥程度上昇しています。それに対して、ハーモニーで遮光した温室ではその上昇がみられません。短時間で飽差が上昇すると植物はストレスを感じて気孔を閉じやすくなります。ご存知の通り、植物は気孔からCO2を取り込んで光合成をしているため、気孔開度が小さくなると光合成量が減少します。また、飽差の急上昇によって蒸散量も急に増加してしまいます。そうすると、根からの水の取り込み量が蒸散量に追いつかなくなり、場合によっては萎れてしまうことがあります。ハーモニーによる遮光ではカーテンが開いたときの湿度変化も改善できます。

図4 テンパ+ラクソスまたはハーモニーで遮光時のカーテン閉度および
温室内から温室外への空気の流れのイメージ図
図5 テンパ+ラクソスまたはハーモニーで遮光時の飽差の推移(2020年6月10日)

③光ムラの改善

 ②で紹介したように、今回使用したハーモニーは通気性が良いため、遮光でカーテンを閉じる際に100%閉の状態にできることが利点です。隙間がないカーテンは100%閉にすると温室内の熱を天窓から温室外へ逃がすことができず、温室内の温度が上昇します。そのため遮光する際には上層を10 %、下層を90 %ずつ閉めるなど隙間を開けることが一般的です(図4)。しかし、上層と下層のカーテンで隙間を開けて遮光すると、その隙間から太陽光が入り込み、温室内に遮光された光と直達光が帯状になり、光のムラができてしまいます。図3のテンパ+ラクソスのグラフで、テンパとラクソスのカーテン閉度が切り替わる際にPPFDが急上昇している部分が光ムラです。ハーモニー+ラクソスのグラフではこのような上昇は見られません。このムラによって、遮光された光が当たっている株は萎れにくいが、直達光が当たっている株は葉の表面温度が上昇し萎れやすい、という株の環境の差ができてしまいます。この環境の差が株の生育差につながり収量を下げる要因のひとつとなります。カーテンの隙間からの直達光を避ける方法として、上層と下層の閉度を増やすことがあります(例:上層10→15%、下層90→95%)。しかし、この方法だと温室内から熱や湿度がより逃げにくくなり、高温多湿の環境になりやすいため注意が必要です。このようにハーモニーには遮光時の光ムラを改善する効果があります。

【高温対策としてのハーモニーの利用】

 以上のように高温期の遮光でハーモニーを使用した場合、テンパを使用したときと比べて、ハウス内の温度、光、湿度環境を改善できます。暑さ対策としてのハーモニーの有効性を理解していただけたと思います。しかし、オープンタイプのカーテンは隙間が空いているため保温性はほとんどありません。そのため、夏場の暑さ対策、冬場の保温性を両立したい場合は2層目のカーテンを保温できるタイプにするなど作型に合わせたカーテンの選定をする必要があります。高温期の暑さ対策が課題であると感じている方は、カーテンの選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか?

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